8.こんな時の、お父ちゃん

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 英児父の顔を見ると、眉間に深くシワを刻み小鳥を睨んでいる。 「おめえ、あのエンゼル、どこで事故った」  龍星轟からスカイラインですっ飛んできた父も、MR2が駐車しているマンション横の路肩にスカイラインを停めたのだろう。きっとその時に、無惨な姿になっているエンゼルを見たのだ。  キッチンで湯を沸かそうとしている翔も、なにか察知したのか、不安そうに小鳥を見た。 「小鳥、なにかあったのか」  車もあのまま隠すというわけにもいかない。修理をするにしても、父親がすることになる。だから小鳥は観念して、あったことを告げる。 「ここに来る前に、いつものダム湖の峠道を走っていたら。ランエボに煽られて……」  男二人が無言で顔を見合わせ、共に顔色を変えた。 「そのランエボ。白のランエボ(テン)だったか」  まるで犯人を見たことあるような父の問いに、小鳥は驚愕する。 「そ、そうだよ。白のランエボで、エアロパーツとかの装飾装備も見たことがない車だった。龍星轟のステッカーもなかったし、エンジン音もここらで聞いたことがないかんじだった」  父の形相が一気に変貌し、小鳥は青ざめる。父ちゃんが本気で怒る前触れ――。 「社長。例のランエボですね、きっと」 「間違いねえ。やってくれたな。しかも俺の娘に――!」  男二人は既にあの不気味なランエボを知っているようだった。 「すごく荒っぽいヤツだったよ。許せないんだけど。父ちゃん、お兄ちゃん、あのランエボのこと知っているの?」  神妙な面持ちで翔が小鳥を見つめる。
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