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開けたドアには、スーツ姿の琴子母と泣き崩れる瞳子さんだった。
「琴子、おまえ、仕事は」
「あんな電話をもらって平気で仕事なんてできないわよ。三代目が『戻ってくるなら少しだけ出て行っても良い』と言ってくれたから来てみたの」
琴子母がこのマンションに着くと、瞳子さんがエントランスでうろうろしていたのだとか。
「よかった。瞳子さん。ほら、いいからはいんな」
久しぶりに会う英児父に促され、彼女が力無く玄関に入った。
「恵太!」
リビングに入るなり、彼女は置いていった赤ちゃんへと駆けていく。
「ごめん、ごめんね。置いて行っちゃって……」
やっぱり、母親だと小鳥は思った。初めての子育てで疲れていただけ。あんなに泣いて後悔しているんだから……。
そして彼女も子供を抱きしめると、顔つきが変わった。
「お騒がせいたしました。もう帰ります」
英児父も翔もホッとした顔をした。
「私がご自宅まで送ってくるわね。そのまま会社に戻りますから」
琴子母も疲れた顔だったが、父に微笑んだ。もうそれだけで、父もにぱっとご機嫌な笑顔になる。
「おう、すまねえな。琴子。頼むわ。あー、良かった。まあ、瞳子さんいろいろあると思うけど、そういうこともあるわ。でももう二度と子供を置いていくなよ」
ひと説教するかと思ったけれど、あんまりにも瞳子さんがしゃんと立ち直った姿を見せたので、英児父も多くは言わないで送り出そうとしている。
「申し訳ありませんでした。もう二度といたしません」
そして瞳子さんは、翔の顔を一度も見ようとしなかった。ダイニングテーブルにあるママバッグを見つけ、彼女も気がついたようだ。
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