10.痛いの、痛いの、とんでいけ

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「そんなことが起きていたの? ご、ごめん。小鳥ちゃんが大変な時に、私は自分のことでいっぱいで」 「ううん。それはいいんだよ。花梨ちゃんのその気持ち、よくわかるもん。なんていうか、通じているようで通じていないっていうのかな」  片思いの気持ちなら、小鳥もわかっているつもり。 「そうなんだよね~。気がないならないって言ってほしいな。ないようであるように見せられると期待しちゃうじゃん」 「わかる。ただの優しさで、ただのお兄ちゃんの気持ちで、ただの妹的存在で終わるのかな~とかね」 「そうそう。優しいのも困るよね」  つい二人でうんうんうなずいてしまう。 「小鳥ちゃん。やっぱり誕生日に告白できなかったの? そんな片思いを語っちゃうなんて」  小鳥は黙る。そして言葉がでなくなる。 「はあ。その様子だと、小鳥ちゃんたら、今度は卒業するときに告白するんだーて、先になっちゃいそうだなあ」 「あの、花梨さん」 「花梨さんて、なに。急に改まって」  そう、小鳥は姿勢を改めて、背を伸ばし彼女に向かう。そして報告した。 「岬に行った日。お兄ちゃんが追いかけてきてくれて――」 『二十歳になるまで待っていた』と、父親に義理を通して、成人するまで待っていてくれたこと、実は小鳥が知らないうちに両想いになっていたことを知らせた。 「えーー!? なにそれ! じゃあじゃあじゃあ、翔兄はずっと前から小鳥ちゃんのことを好きだったってことなの」 「そ、そうだったみたい。えっと、でも、まだ実感がないんだよ。嬉しいよ、すっごく嬉しい。でも……本当に女性として見てくれているのかって実感が……」
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