10.痛いの、痛いの、とんでいけ

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「そんなことは滅多にないから。ほんと、思い切っていったほうがいいよ。でも無理して女の子だけ痛い思いして、セックスが怖くなることもあるらしいから、イケイケともいえないかな。翔兄が待ってくれるだけ待ってもらってもいいと思うよ。二十歳まで我慢できたんだし、翔兄は十代のオサル男みたいにコントロールできないってわけでもないでしょ。ずっと大人なんだから、大丈夫だよ」  やはり花梨に相談して正解だと思った。すぐにからかったりしないで、ざっくばらんにでも真剣に話してくれる。だから小鳥も思い切って相談できる。 「うん、そうする。無理しないで、今度、心からそうしたいと私が思ったときに愛してもらう」 「それがいいよ。愛してほしいって気持ちが、身体の感じる反応につながっていくんだから」  そう教えてくれる花梨をみて思った。  花梨ちゃん。本当は宮本先輩と良いセックスをしているんだと。でも、だからこそ、将来を思って憂うのかもしれないけれど。 「こんにちはー」  やっとスミレがやってきた。  彼女は教育学部幼児科で保育士になる勉強をしている。ピアノを活かしてというが、おっとり優しい気配り上手の彼女にぴったりの進路だと思っている。 「遠くからお二人をみていたら、すっごい怖い真剣な顔でお話していましたけど」  清楚なブラウスとキュロットスカート姿、ふわっと愛らしいボブカットになったスミレは、高校生の時よりあか抜けていた。  今日の彼女はお弁当。彼女こそ、この大学の校風にぴったりの堅実なお嬢様といったところ。  お弁当の包みを小鳥の隣の席において、スミレも座った。 「痛いのどうするって話をしていたのよ」 「痛い? なにが痛いんですか」
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