23人が本棚に入れています
本棚に追加
――約束だよ。
「エイプリルフールの嘘だって、言ったじゃん」
「ごめん」
私は、点滴に繋がれて、力ない顔で笑う夫を見つめた。
視界が涙で濡れて、夫の顔はぼやけていた。
「ずっと一緒って言ったじゃん。光輝が手から離れたら、喫茶店巡りしようって……温泉旅行しようって…言ったじゃん…っ」
何で?
どうしてあの時、嘘ついたの?
「あんな風に泣かれたら、本当のこと言えなくて。君が頼りなかったとかじゃなくて…君に光輝を残していなくなるかもしれない自分が、不甲斐なくて」
「だからって…っ」
家族だよ?
私たち、夫婦なんじゃないの?
どうしてしんどい時、ツラい時、頼ってくれなかったの。
言いたいことは山ほどある。
あるのに、言葉にできなかった。
最初のコメントを投稿しよう!