エイプリルフールの嘘が嘘じゃなかった話

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――約束だよ。 「エイプリルフールの嘘だって、言ったじゃん」 「ごめん」 私は、点滴に繋がれて、力ない顔で笑う夫を見つめた。 視界が涙で濡れて、夫の顔はぼやけていた。 「ずっと一緒って言ったじゃん。光輝(こうき)が手から離れたら、喫茶店巡りしようって……温泉旅行しようって…言ったじゃん…っ」 何で? どうしてあの時、嘘ついたの? 「あんな風に泣かれたら、本当のこと言えなくて。君が頼りなかったとかじゃなくて…君に光輝を残していなくなるかもしれない自分が、不甲斐なくて」 「だからって…っ」 家族だよ? 私たち、夫婦なんじゃないの? どうしてしんどい時、ツラい時、頼ってくれなかったの。 言いたいことは山ほどある。 あるのに、言葉にできなかった。
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