エイプリルフールの嘘が嘘じゃなかった話

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――ずっと一緒だよって。80歳まで長生きしようって。 ――一緒に喫茶店巡りするんでしょ。温泉旅行も、国内旅行も。 5年前のあの日、ずっと先の未来の話をした。 先がないってわかってて、君は一体どんな気持ちで、先の話を、あんな笑顔でしたの…? 「それに、余命宣告が嘘だって言ったのは、希望捨てれなかったんだよ。もしかしたら治るかもしれないって。もし治るなら、余命宣告されたことを君に伝えると、不安にさせるかもしれないから、言えなかったんだ」 あの時は妊娠中期で、割と些細なことでも不安を感じやすかった。 でも、だからって、ひとりで苦しむことなかったじゃない。 「治ってるつもりだったのに、ごめん。嘘もたくさんついた。本当ごめん」 ごめんなんて言われたら、思ってること言えないじゃない。 責められないじゃない。 …どこまでも、ズルいよ。 「残業とか休日出勤とか言ってた日、あれ全部通院だったんだ。心配かけたくなくて、嘘ついた。…そのせいで、育児ひとりでさせたよね。…本当に、ごめん」
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