エイプリルフールの嘘が嘘じゃなかった話

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「…私こそ、知らなかったとは言え、喧嘩のたびに薄情者だなんて言ってごめんね…。嘘つかれてたって、些細な変化くらいあったはずなのに、全く気が付かなかった」 全部言ってくれたらよかったのに。 そう思うけど、でも、私が夫の立場だったら、包み隠さず全部言えたのかな。 きっと、ひとつやふたつくらい、嘘ついたと思う。 ましてや、自分が突然余命宣告なんてされたら、自分ですら受け入れられてないことを、パートナーに伝えるなんてできない。 「何か、眠たくなってきた」 君はそう言って、目を細めた。 「いつもの眠たさと、何か違うんだよね。怖いから、最期に伝えたいこと、言っていいかな」 「……うん」 最期、という言葉に、背筋が伸びた。 口を真一文字に結んで、両手を膝の上で握りしめ、私は夫の顔を覗き込む。 「愛してる」 「……私だって、愛してるよ」 夫は、力なく微笑んだ。 「後のこと、頼んだよ」
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