赤字フラグと時を経た回収

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赤字フラグと時を経た回収

想い出がある。 遠い学生時代。文芸部に在籍していた私に、隣のクラスの国語の担当教師が 「宝条!!小説を描け!!自分を赤裸々(せきらら)にさらけ出せ!!」 と職員室で他の教員がいる中、立ち放しのわたしを相手にニ時間も熱弁(ねつべん)してくれていたのだが、  その言葉は大人になって身が社畜と化しても何故かRPG序盤で勇者が啓示(けいじ)を受ける赤文字の大事なフラグ情報のごとく、頭から離れなかった。  その先生はわたしの友達とは反りが合わずコオロギと呼ばれ昆虫扱いされていたが、  太宰治と喧嘩したらしい某有名詩人の詩のレビュー集にわたしが寄稿した詩のレビューが採用されたものを図書館のギャラリーに飾ってくれるような優しさがあり、わたしは光る和紙で折られた折り紙の鶴と共に綺麗なオブジェのように大切に飾られた、自作レビューの見開きページを図書館の前を通りがかり見る度に喜びが込み合げ、嬉しかったのだった。  今思えば先生はなんて(いき)な事をして下さっていたのだろうか。  その言葉が毎年一年一年と年を重ねる度に頭をよぎるのだが何だかんだ諸事(しょじ)も有り執筆を中々始められなかった。  ある日友達のお母様から寄稿したという文芸誌を頂き、その方の作品の中で、 『いつかいつかと思っていてもその時は来ない』 という一文があり、騎士の馬上試合の槍のようにわたしの心に刺さった。  騎士でもないし馬上試合の経験も無いが脳内ではイメージ的に騎士が長い槍で心臓周辺を突かれ落馬するレベルに致命傷であった。  それからというもの神からのメッセージかというように、テレビを見てもブログを読んでも同じような言葉が目に飛び込んでくる。 『赤裸々』『いつかはこない』 いつかはこない赤裸々??!  本当にこれは何かのメッセージなのではないかと思うようになった。  多岐(たき)にわたり不遇(ふぐう)と呼ばれるミレニアル世代ではあるが、2020年の誕生日を迎えたら『着物を着て執筆をする』という目標を立ててみた。
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