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 一階に下りると、麻美おばちゃんはソファーに座っておんおん泣いていた。  挨拶をしていいものか悩んでいたときに、後ろからおばあちゃんが階段を下りてきた。 「麻美ちゃん、どないしたんや」と言いながらソファーに座って、おばちゃんの背中をさすりだす。  おばあちゃんに緩い力でああして背中をさすってもらうと、とても落ち着いた気持ちになることを思い出していた。 「おおちゃん・・」  麻美おばちゃんはそう言って、おばあちゃんに抱きついた。  おばあちゃんの腕は、麻美おばちゃんの背中には回りきらない。でも片手でゆるゆるとさすりながら、片手でぽんぽんと麻美おばちゃんの背中を叩いてあげていた。  私は冷蔵庫の水をグラスに入れながら、三人の様子を伺う。  やっと泣き止んだ麻美おばちゃんが、子供みたいにくすんくすんと鼻を啜りながら言った。 「おおちゃん、博美姉ちゃん、えらいことやねん。うちのお母さん、ガンやねん」  私はグラスを倒しそうになった。
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