でたらめ先生のうそつき授業

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とにかくエックスザウルスは生き残っていたんだ。なんでかというと、そいつは子どもを食べていたからだ。人間の子どもだ。なんで人間の子どもかというと、人間の子どもを食べていれば食糧に困らないからだ。 人間の子どもってのは、いつでもどこでも減らしたいぐらいにいるんだ。特に減らず口の減らない子どもが。 子どもを食べれば、自分で畑を耕す必要はないし、リンゴの木の下で実が熟すのを待っている必要もない。何ヶ月も船に乗ってマグロを釣りに行かなくてもいいし、つくしのように水にさらしてアクを抜く手間もかからない。 おまけに子どもを捕まえるのは、とっても簡単なんだ。エックスザウルスは、ただ見晴らしのいい丘の上で、子どもがやってくるのを待っていればいい。だって子どもは恐竜が好きだからね。 何もしなくても子どものほうからやってくる。やってきたらしめたものさ。なにしろ恐竜だ。子どもなんて一口だ。あ〜んと大きな口を開いて、ペロンと丸飲みにすればいい。 子どもを一人丸飲みすれば、ひと月は飲まず食わずで生きていられる。そりゃあ大人に見つかったら大変だけど、一年でたったの12人しか子どもがいなくならないんだから、大人たちはエックスザウルスの存在に気付いてなかったんだ。昔は子どもがいなくなるなんてしょっちゅうだったし、兄弟も多かったから、夕食の食卓に誰かがいなくなってたりしたって、親は気付かなかったんだ。 飲まれた子どもはひと月ぐらいすると帰ってきた。お尻から出てくるからね。エックスザウルスは丸飲みだから、子どもは飲まれたときのままの姿で出てくる。 それどころか、少しいい子になって出てきた。だから親は大喜びさ。子どもが帰ってきたうえに、いい子になってるんだから。もちろん、親は子どもが恐竜に飲まれていたことなんて知らない。 当時の親は放任主義が多かったとはいえ、子どもがいなくなって一週間くらいすると、さすがに心配しはじめる。でもその頃は子どもがいなくなると、それは大抵神隠しのせいにされた。 普通の神隠しだと、もう二度と戻ってこないことが多いんだけど、それがひょっこり帰ってくるわけだ。しかもいい子になって。 だけど、どんな風にいい子になるかはわからない。ある男の子は、赤ら顔で悩んでいたけど、少し顔色が青ざめて戻ってきた。また、ある女の子は太り過ぎで悩んでいたのが、ほっそりして帰ってきた。 また、ある男の子か女の子かわからない子どもは、男の子か女の子かわからなくて悩んでいたけど、おしっこを立ってするのが男の子ということを学習して戻ってきた。 また、ある男の子か女の子かどちらでもどちらだっていい子どもは、特に悩みはなかったけれど、インド式計算法を身につけて帰ってきた。でも、カレーを食べたらすぐに忘れちゃったけどね。
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