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世界最強の狩人
無理だ。
殺せない。どれだけ刻めばいいんだ?
息がもたない。
世界最強の狩人の二つ名を持つ俺が、
殺せない相手を前にして、
絶望に佇んでいる。
爪がこっちに向かってきている。
分かっていても、動けない。
おかしい。
──ああ、死ぬんだ、終わりなんだ。
そう、直感した。
目の前に飛び散る赤い液体。
それが何か、始めは分からなかった。
なぜか。
それは、痛くなかったから。
それは、苦しくなかったから。
それは、もしかしたら、
分かりたくなかったから。
誰かが、盾になって、俺を守った。
秋良「──新木…?!」
戦鬼隊、隊長。
俺に最も親しくしてくれた後輩だ。
呼び掛けても、もう遅かった。
俺は気が飛んだかのような感覚に見舞われた。
何もない空間にいるかのようだ。
???「欲しいか?力が
仇を討てる程の力が」
秋良「欲しい。俺は、親しくしてくれた
人間を守れなかった。悔しい…
俺は、俺は嫌いだ。こういう俺が
だから、力を、くれ」
それは、フッと微笑むと、消えて…
奇獣は、バラバラになって吹き飛んでいた。
もう、再生しなかった。
大きすぎる代償と引き換えに、
俺は《代償》の仇を討った。
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