切望のアルマ

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 ***  異星人が魔法攻撃を仕掛けてくる、サイレンが鳴って住民達が一気に近場のシェルターに避難する、そして敵襲がなくなったところで出てきて攻撃によって壊されたものを片づける。ここ数年は、そんなことが当たり前のように繰り返されていた。最初は半年に一、二回程度だった襲来が、今では毎週のようにあるという恐ろしい状況。サイレンが鳴ると、それだけであらゆる活動が停止を余技なくされることになる。この国の経済活動への影響が、経済的損失が――そんな話をテレビではちらほらやっていたが、まだ子供のハナミにはあまり意味がよくわかっていなかった。  多分、異星人が襲来してくるせいで、いろんなことが進まなくて迷惑している人がたくさんいるのだろう。そして、たくさんの人が怪我をしたり死んだり、家を失ったりして困っているのだろう――と思う。  異星人の力は恐ろしい。なんせ、地球人にはない力をたくさん持っている。 「何で地球人には、宇宙人みたいに魔法を使う力がないのかな」  ハナミは家族の食卓で、いつもそんなことを口にした。 「魔法が使えたら、私が宇宙人なんかみんなぶっ飛ばすのに!魔法少女マリーみたいに変身して、悪い奴をみんな倒しちゃうんだから!」 「ハナミは勇敢だな」 「そうね、そうなったらいいのにねハナミちゃん」 「……ふん」  そういう話をすると、何故かいつも年の離れた姉は不愉快そうな顔をする。大学生の彼女もきっと、異星人襲来に迷惑している一人だろう。 「そんな可愛い話で済むわけないじゃない。馬鹿じゃないの」  でも、だからといって馬鹿呼ばわりはよろしくない。大抵、そこでハナミと姉は喧嘩になるのだ。自分よりずっと体が大きくて力が強い姉に、ハナミが勝てるはずもないのだけれど。  全く、わけがわからない。悪いのは異星人であってハナミではないのに、何故姉はハナミに対して怒るのか。地球人にも魔法が使えたらいいのに、自分がヒーローになってみせるのに――その例えの、一体何が気に入らないというのだろう。  そんなハナミの、八歳の夏のこと。
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