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 私は十五歳になるまで自分を不幸だと思った事がなかった。不幸だと思えるのは幸せを知っているからだ。私には生まれてからの事すべてが日常で、外に違う世界があるなんて知ることも考える余地さえもなかった。もしもあの頃に知ってしまっていたら、私は不幸になっていた。  私が私を不幸だったと知ったのは、ダディ(義父)と過ごした三年間があったから。十五歳から十八歳までの三年間、他人からはどう見えようと私は幸せだった。ダディを失ってからは取り巻く大人たちを切り捨てて、環境を整えながら精神と肉体を磨いた。そして心の毒抜きと、それに必要な技術も身に着けた。  本当の孤独(じゆう)を手に入れた私は誰にも見えていない。目には映っていても認識されなければ存在しないと同じ。 ――ああ  世間という暗闇から解き放たれた孤独とは、なんて気持ちが良いのだろう。  時折、足を止めてスクランブル交差点の人混みを眺める時がある。橋の上から川を流れるゴミを眺めるように。
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