竹の花が開く時

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 神社からの帰り、三人はまだ信じられないという表情を浮かべていた。筒井が渡と遠山の顔を交互に見ながら訊く。 「結局、あの異形の竹は何だったんでしょう?」  渡が歩きながら言う。 「あくまで私の解釈だが、地下の熱エネルギーを吸収し、レーザー光線に変換して宇宙空間に放出する。そのための生物マシーン。そう考えれば、噴火の直前になってマグマの温度が急低下した事の説明がつく」  遠山がハッとした表情で訊いた。 「データ解析の結果が出たんですね?」 「ああ、赤い竹の花からレーザー光線が放出された直後から、富士山の地下の熱エネルギーが急激に低下していたそうだ。解析した物理学の連中によれば、その消失したエネルギーの総量は、天文学的な数値だとさ」  筒井が少し青ざめた顔で訊いた。 「だったら、もしあの現象が起きていなかったら、富士山はもっと巨大な大爆発をしていた……そういう事ですか?」  渡は額の汗を指で払いながら答える。 「もしそうなっていたら、首都圏壊滅どころじゃすまなかっただろう。本州が二つに裂けていたかもな。あくまで仮説に過ぎんが」 「それにしても」  遠山が首をかしげながら言った。 「なぜ竹なんでしょう? 植物なら他にもいくらでも花をつける種はあるのに」  渡が立ち止まって振り返った。 「あの伝説、小さい子供向けの絵本でしか読んだ事がないようだな」  筒井が言う。 「渡先生は何かご存じなんですか?」  渡はまた歩き出しながら答える。 「その疑問に対する直接の答にはならないがね。あの天女の名前にはいくつかバリエーションがある。その一つが」  渡は道端の普通の竹の幹に手を伸ばし、その艶やかな緑の表面をなでながら、その名を口にした。 「なよ竹のかぐや姫」
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