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「あーよかった」胸を撫で下ろすように優馬が言った。
どうやら本当に優馬も緊張していたらしい。そうわかるといつもの、さっきの仕返しとばかりに少し意地悪がしたくなった。
「本当は顔見て告白して欲しかったけどね〜」
「えっ。ははっ」「ちょっと言われるかなって思ったけどさ」
きっと画面の向こうで苦笑いしてるだろうな。それを想像してちょっと得意げになる。
「まあいい……」
「分かった」
「えっ」予想外に話を遮られる。
「じゃあせめて顔見て告白し直すからビデオ通話に切り替えてよ」
なっ。「えっ、やだ絶対やだよ」
「なんでだよ、いいじゃん」
「やだ!すっぴんだし、な、泣いた跡あるし!」
「大丈夫だって」
「やだよ〜」
平行線の言い合いの結果、電気は明るくしないという条件でビデオをONにする。
画面の向こうに優馬の姿が写った。
「うわっ、こっちからは全然見えねー」
「こっちからはばっちり見えてる」
「うわ、ずりー」
ハハハっと2人で笑い合う。
きっと意識しなくたって勝手に上がる口角ぐらいは、向こうに見えてしまっているかもしれない。
「前田、好きだよ」
ズキューン!
不意打ちにハートを撃ち抜かれる。
「んんっ、ずるいよ!」
「へへっ、顔見せてくれない仕返し」
「んー」仕返ししたいのはこっちだ。いつもからかってくるのは優馬のくせに。
「でもしょうがないよ、前田のこと好きだか……」
「明里」優馬の言葉を遮る。
「へ?」
「明里って呼んでよ」
「えっ」優馬は戸惑いを隠せていない。してやったりだ。
「前田、じゃなくて明里って呼んでよ。私は優馬って呼んでるのにおかしいじゃん。今日は真実を誓う日なんでしょ、これからは明里って呼ぶって誓ってよ」
調子に乗って攻撃を続ける。
「えーっ、分かったよ」「明里、好きだよ」
「んっ」
画面を通してでも優馬の顔が赤くなったのが分かった。
でもきっとそれよりも明里の顔の方が赤くなっている。
向こうを照れさせるつもりだったのに自打球が返ってきた。
「なんか言ってよ、はずいじゃん」
頬を染めたまま反応しない明里に優馬が言った。
「ありがと。私も好き」
自分の言葉にもう一度ほっぺたを紅潮させる。
向こうの画面は暗いからきっとバレていないはず。
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