本の森のドーナツ畑

　暖かい日差しのわりに、ビルを抜ける少し強い風が、どこからか運んできたソメイヨシノの花びらを見上げた青緑色の空に舞わせていた。

どこから飛んできたんだろう？
向こうのビルの隙間からは、青緑色の空をわたあめで包んだような薄雲が広がっている。

あの空の色、とても好きだ。
特に、わたあめがマーブル模様のようにゆっくりと動いていく様はとてもキレイだ。
繁華街のなかで見えるこの風景は、確かに世界がずっと遠くまで続いていることを感じさせてくれるから、ずっとみていても飽きない。

ずっと見ていても・・
ずっと見ていても・・・・

・・って！
それにしても遅すぎやしないだろうか。
待ち合わせの時間を30分は過ぎている。

事故にでも遭っているといけないし、連絡してみるか・・。

そうして携帯電話を鞄から取り出そうとしていると、少し向こうの方からサキの姿が見えた。