本の森のドーナツ畑

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その後で、 「また明日も来ようね!」 と言ったのは、私の方だった。 そして・・ お店を後にしようとしていた時の事だった。 「あの、お客様、以前にこれ落とされていませんか?」 と、私を呼び止めてそう言ったのは、さっきまで演奏していた黒縁メガネさんだった。 そう言って黒いベストのポケットから出したものは、私が無くしていたデイジーの飾り付きのヘアゴムだった。 それは、狭いポケットの中で、丸まって蕾みたいになっていたからかも知れない。 彼の手の中で、柔らかくて白い素材で出来ているプラスチックのデイジーの花びらが、ゆっくりと広がっていく様を見ていると・・ なんだろ、これは・・ なんかキューッときてる! 「落とされた後で追いかけたのですが、結局渡せないまま今日まで預かっていました。」 そう言って、私の手にヘアゴムを置いてくれて、指が触れた瞬間! こ、これがそうなのね! なんだか花が開くように、パカッ!って視界が開けた! あぁっ! なんだろ? 彼の黒縁メガネが眩しい! キラーンって光ってる! これがサキの言うあれなのね! なんてステキな感覚!
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