本の森のドーナツ畑

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「おはよう。 サキ。 そう言えば、待たせてた。」 と、サキはまたまたどんより言うから、私は30分の大幅遅刻についてはなにも言えなかった。 「まぁ、いいよ。 とりあえず行こうか?」 そう言って、私たちは少し歩いて、旅行者向けのホテルの繁華街側にある、大きなガラス張りのお店の前に着いた。 ガラスの向こう側には、背の高い本棚が奥の方まで三段あって、手前にはゆったり座れる椅子と対になっている小さめの白いテーブルがいくつも見える。 マガジンラックに見える雑誌の一冊は、アンディウォーホールのマリリンモンローの表紙であることが遠目でもわかる。 「私、ここ来てみたかったんだよね。」 そう言って、目の前のガラス扉が自動で開くと、私の視線とほぼ同じ高さにガラス扉に鋳込まれている『Hon no mori』と真鍮で造られたプレートが、真ん中でパカッと分かれて左右に広がっていった。
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