エイプリルフールの小さな嘘

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今日もいつも通り登校する。 僕の目の前には、つり革につかまっている女子高生が居た。 屈託ない笑顔で友達と談笑をしている。 彼女らは知らない高校のブレザーを着ていて、ひとつ手前の駅で降りてしまった。 僕は気に留めるまでもなく、スマートフォンの画面に目を落としていた。 どんな格好の子かなあ、気になったんだ。 たった一瞬だけ。  ・・・ いつの間にか、僕とまこちゃんは話をすることが日常茶飯事になっていた。 ☺️ <[おはようございます!] 🐹 <[おはよう~] だいぶ会話の調子は砕けていた。 いわゆるため口というやつだけど、お互いに悪い気持ちはしなかった。 この会話というのは、ふたりだけではなく他のユーザーからも見ようと思えば見ることができる。 それでも、特に気にならなかった。 もし、ふたりだけの言葉で交わそう、となったらどんな風になるのだろうか……。 それを打ち破ってきたのは、まこちゃんから送られてきたDM -ダイレクトメッセージ- だった。 この機能を使うと、誰も覗くことができない、ふたりだけのチャットをすることができる。 🐹 <[こんばんは……。ちょっと怖いことがあって] 🐹 <[夜、塾に行こうとしてたら、○○の場所を教えてくださいっておじさんに言われた。] 🐹 <[だけどさ、急に怖くなって私はすぐに逃げたんだよ] お風呂上りだったけど、ドライヤーを使うのも忘れて画面に見入ってしまう。 僕は何を言えば良かったのだろうか。 頭の中が”緊張”の二文字で埋め尽くされた僕は、これと言ってコメントできなかった。 ☺️ <[だいじょうぶ? 逃げられたかなあ] 🐹 <[うん。何もなかったよ] ☺️ <[深呼吸しなよ、気分が落ち着くからさ] 🐹 <[よかった。君に言ってスッキリしたよ] 僕は息を撫で下ろした。 おやすみなさい。 お互いに心地よく眠れますように…… そういう願いを込めて、スマートフォンに入力したんだ。 彼女との距離が近くなった日だった。  ・・・
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