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優秀である、と評価された後。
それを持続するには努力と、我慢と…、とにかく色々なものが必要だった。
要領のいい人は上手くやるのかもしれないけれど、自分がそんなに器用ではないことを自分が1番よく知っている。
《他人によく見られるため》、《他人からの評価を下げないため》。
そればかりが常に頭の中にあって。
息苦しさを感じながらも、《他人の目》から逃れることは出来なかった。
人に悪く言われるのは怖い。
人に嫌われるのは怖い。
人に呆れられるのが怖い。
人に関心を持たれないことが怖い。
…誰にも必要とされないことが怖い。
人が面倒くさがるようなことは率先してやる。
誰にでも平等に、ニコニコしていれば悪い印象は持たれない。
それでも、誰かに嫌味を言われたときは、頭の中が真っ白になる。
忘れたくないことは、あっさりと忘れるのに、忘れたいことほど、いつまでも頭の中に残り続けるから。
それなら、と。忘れたふりをする。
忘れたふりをしていれば、きっとそのうち、ふりも、本当になると。
泣きたくても、口角を上げていれば、笑顔になれると。
嫌いなことも、嫌なことも、自分が好きだと思い込めば、好きになれると。
信じて、思い込んで、悲鳴をあげる自分自身に気付かないふりをする。
擦り切れそうな胸の奥の何かは見ないふりをする。
万人に好かれるのは無理だと知りながら、
万人に好かれようとする馬鹿な私。
(大丈夫、大丈夫)と言い聞かせて。
今日も私は嘘に包まれた私を演じます。
「嘘つき」
全てを見透かすような、真っ直ぐな瞳を私に向けて、そう呟く、誰かに気付かないふりをして。
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