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手の汗
真田と理玖は
物心ついた時からの幼馴染み
二人は
親どうしも仲良く
兄弟のように育った
だから
私が入り込めない二人の話は多くあった
二人は、親友だ
三人で帰るとき
真田の家の近くまでは
真田と理玖が並んで歩く
楽しそうに話をしていて
私はその声を耳に入れながら
スマホを片手に
後ろをテクテクついていく
最後の丁字路
真田と別れたあとは
理玖が愛嬌一杯の笑顔で私の右手を握り
私の家の前まで、手を繋いで帰った
私はいつも
振り返ることはできなかった
こうして、手を繋いで歩いている姿を
真田は見ているのだろうか?
それとも
あえて
見ないように
家の中へ直ぐに入っているのか…
どちらにしても
想像するだけで
胸がキュッと痛かった
「クリスマス
ちょっと大人っぽいデート考えてるんだ」
理玖が言う
「どんな?」
私は
理玖の仔犬のように純粋で可愛い笑顔が好きだ
「もうすぐ受験だろ?
たぶん、春まではデートとか難しいだろうし
進みたい!」
"進みたい"
と言うのは
彼なりに私に対して
誠実に向き合っているからこその言葉選びで
ストレートに言うと
"キスしたい"
と言うことだろう
私は、頬が熱くなるのを感じて
恥ずかしくなって
下を向いた
理玖は、私の手をしっかり握り直して
「どこかへ行くんじゃなくて
俺の部屋に遊びに来てほしい
昼間は
親も仕事でいないし…
ケーキとかお菓子とか買って
パーティーしよう
二人で・・・」
理玖は珍しく
真面目な表情でこちらを見た
ドキッとするくらい
大人っぽく見える
私は、首を縦にふることしかできない
こんなこと言うのって
勇気がいっただろうし
前もって気持ちを教えてくれるところが
彼らしくて潔く見えた
理玖は、私の方を不安そうに見た
私は、緊張した表情を隠しきれないまま
少しひきつった笑顔で
もう一度うなづいた
それを見ると
理玖も頷いた
彼も
緊張したんだろうな・・・
そう思うと
握られた手の汗が愛おしくなった
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