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浴衣
「あれ、何をしているんだ、父よ?」
「ん?あ~ちょっと押入れの整理をな~」
「へぇ~」
「ん?なんだ、そんなに見て?」
「いや、そんなに行き詰まっているんだな~と思って、仕事が」
「さすがだな娘よ…」
「何年娘してると思ってるのよ…それで…うわーなんかいろいろ出てきたね~」
「そうだな~随分長いこと触れていなかったしな…っん?」
「ん?どうしたんだ、父よ?」
「いやこれ…なんだったかなって…?」
「えっと…これのこと…?」
「そうそう、その平べったい、包み紙のヤツ…」
「開けてみる…?」
「おう、頼む」
『ガサガサ』
「…へぇースゴい、綺麗な浴衣~こんなのウチにあったんだ~」
「…」
「ん?どうかした…?」
「…あっ、いや…なんでもない…」
「なんだよ…なんかあるの、この浴衣?もしかして小説の資料とか…それとも…」
「それとも…?」
「まさか…そういう趣味?」
「どういう趣味だよ!!」
「だってこれ、明らかに女性モノだし…それともまさか、酔った勢いで買って来たとか!?」
「そんなの買うとこまで酔ってたら、多分父さん、意識なくなってるよ、それにほら、それは明らかに高そうなヤツだろ…」
「一体いくら使ったの…?」
「信用してないね!!!」
「するわけないでしょ!!だってこの間のあの缶チューハイの時だって、夜中にいきなり外に出て、そのまま帰って来ないと思ったら、駐車場でそのまま寝落ちしてたじゃん!!」
「いや…あれは…」
「そもそもわかりづらいんだよ、酔ってるときも普段と変わらない感じで喋るし、顔も赤くならないし、そんで大丈夫なのかな~って思ってたら急にそういうことをするんだもん!!」
「いや…それは…」
「何か言うことはある?」
「…」
「…」
「すまん…」
「本当にそう思ってる…?」
「思ってる思ってる…今度からは気を付け…」
「じゃあ~この浴衣私にちょーだい!!」
「えっ、なんでそうなるの!?」
「迷惑を掛けたことに対しての報酬というヤツですー」
「え~そうなるのかよ~」
「いいじゃん!どうせそんな身体じゃあ~こんなの着ることなんて、一生ないんだから~」
「いや…たしかにそうだけどさ…」
「ねぇ、だめ…?」
「…」
「…」
「あーわかったよ、いいよやるよ!」
「ほんと?やったー!!」
(その代わりに、ちゃんと大切にしてやれよ~)
「えっ?今なんか言った?」
「いいや、なんでもない…そういや明日、夏祭りあったよな?」
「えっ…あーうん。そういえばそうだね」
「久しぶりに、一緒に行くか?」
「ほんと?全部おごり??」
「あーハイハイ、奢る奢る、誰が娘から金をとるかよー」
「へへへぇ~だよね~」
続く
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