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オーディションから数日後。
明梨は一度訪れていたので道を間違えることなく、集合時間の20分前に目的地のセオドア芸能事務所の本社ビルに辿り着くことができた。
受付に向かい用件を伝えると、エレベーターで上がった先の化粧室に案内された。
宣材写真を撮影するために、化粧室には数種類の衣装やメイク道具が準備されていた。
まるで統一されたお店のように綺麗に並べられた数種類の衣装たち、これを見てテンションが上がる。
襟の部分にパステルブルーの蝶結び状の紐が着いたパステルパープルのトップスを持ちながら、聖楽とことははお互いに敬語で話していた。
明梨が来たのに気づいて挨拶をする。
「おはようございます」
「おはようございます」
「おはよう、ございます」
オーディション以来メンバーと会うのは今日が2度目で、まだ本格的に話したことがない。
「衣装この中から選んでいいそうです」
なんとなく敬語で喋った方が落ち着いてしまう。
そんなやり取りをしていると、夢芽が欠伸をしながらやってきた。
「おはようございます」
「おはよう、なんで敬語なの?」
「なんとなく」
疑問に思ったのか夢芽が明梨に聞いたけど、自分でもわかってないのに他人に説明できるわけがない。
夢芽が微笑んだ後に口を開いた。
「タメ口でいいよ。明梨ちゃんも私のことは夢芽って呼んでほしいなぁ」
きっかけがほしかったのかもしれない。
誰も言わなかったから、自然と他人のように接してしまったのかもしれない。
「ことはちゃんと聖楽ちゃんも夢芽って呼んでね」
「うん、夢芽ちゃん」
夢芽のいう通り、このグループのメンバーに対してタメ口もさん付けも必要ないのかもしれない。
集合時間の5分前にはメンバー全員が到着したあと、スタッフさんに相談しながら自分が着る衣装を選んだりメイクをしてもらった。
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