読み上げ間違い

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読み上げ間違い

 私の名字は旧字体なのでパソコンでは出てこないんです。学生の頃の配布物やプリントはいつも手書きか何かしらの記号でした。  クラス替えや席替えの点呼が一番の苦痛です。教卓の上に貼られた座席表を見て講師が授業を始めます。 「では出席を取ります。・ 澤 (ポツザワ) 」  そんな奴いるかい!!  しばらくのあだ名はポッツンでした。これは意外と可愛かったので好きでしたけどね。  お客様の支払金額を読み上げる時、緊張します。読み上げ間違いをたまにするので注意して業務に当たります。  合計金額が1299円だったら良いのですが、末尾96円だったら69円と言ってしまう時があります。  それって読み間違いの病気とも言う人もいますが私的にはクセなんです。昔、そろばんをやってました。多分そろばんをしていた人には分かると思いますが、五玉と一玉から成り立っているシンプルな計算機は、自分の頭が電卓で、そろばんがモニターなんです。  6は5と1、これが一般。でもここから数字4が加わって9が出て来ます。  分からないですよね、ごめんなさい。  そんな頭の中の独自計算が発動して数字の読み上げ間違いが起こります。 「1269円です」  耳で聞いていたお客様が小銭をあさり、現金トレーに出します。 「ごめんなさい、あと27円ですね」  有り難いことに、私の言い間違いだからってそんなに怒るお客様はいません。  どうやら私、いかにも計算できません的なお客様にそれをやってしまったようで。  若い男性のお客様は私の言った金額を出したのですが、金額表示を見て出し直しました。既にそこでパニックにになっているお客様。私もそこでそろばん間違いをします。 「では5051円のお預かりです」  合計をポチッと押してから気付いた。  5052円あるじゃん!  1円打ち間違えたのでお返しが2039円。 「ごめんなさい、52円なのに51円で打ってしまったので繰り上がって、2040円のお返しです」  納得のいっていない男性のお客様。 「じゃぁちゃんとしますね」  電卓で計算します。 「2040円で大丈夫ですね?」 「分からなくなってきた」  まだ理解できていないようです。 「もう一回やってみましょうか」  後ろの行列を見て怯んだお客様は 「そこまで言うなら大丈夫かなぁ」  そう言って帰られました。  打ち間違いは私の責任です。でも現金を払うのはお客様なので、きちんと理解していただかないと良くないです。  ちなみにその日のレジ金誤差は0でした。  本日もご来店誠にありがとうございます。  
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