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地味女の告白
彼女はわずかの時間しか共にしていないオレなどに、コアな告白を躊躇わなかった。
「…ええ、自分でも分かっています。実は…、派遣切りのあおりで、バイトをいくつも抱えないと苦しいもので…。なんか、よくわからないでこの仕事も…」
彼女は仕事の傍ら、将来を見据えたスキルアップ目的から資格取得の講座や学校通いなどで、ローンをけっこう抱えて返済に追われていたそうなんだ。
「今日は奥山さんに助けられました。元気つけられました」
彼女は変な言い方だが、あの花タクシー添乗という、わずかな時間の中、”プロ”を全うできたことで、”何か”がぼんやりとなりに見えてきたものがあったのかもしれない。
それは表情からも伝わって来たし…。
***
「本日はリップゲートの花タクシーをご利用いただき、ありがとうございました…」
「ありがとうございました!」
家の前で、運転手のヒデ君も含め5人全員が正面に並んでくれて、丁重な礼をいただいた。
「こちらこそ”貴重な経験”させてもらって、感謝します」
「いえ…、奥山さんみたいに”理解”くださって、ああやって積極的に興じてくれる方は、なかなかいないんです。みなさん、大抵は受け身で遠慮がちで、結局は不完全燃焼で…。大抵はそうなんですよ。私たちは今夜、奥山さんと”やれた”あのカタチを理想としてるんです。ほんとにありがとう、奥山さん…」
「まあ、僕の収入じゃあ、花タクシーは滅多に無理でしょうけど、機会があればお店には顔出しますよ」
「ええ、お待ちしてますね❣おやすみなさい…」
りりかの何ともしんみりな顔つきが印象的だったな…。
これが、私の、まさしく最初で最後だった幻の花タクシーの体験…、そのすべてである。
手記 ー完ー
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