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8話 DM :[Yuto]
あれから優斗は帰らなかった。
母は必死であたりを探したが、警察官には引きこもりの少年が現状に苦しんで疾走したと思われた。
また母も時間が経つにつれて、急に部屋を出た息子の挙動に違和感を覚え、自分の中で何かを納得し、諦めてしまった。
そしてまた誰かがどこかでSNSに「死にたい」と呟いた。
2021/3/15 20:19 mako:死にたい。
2021/3/15 20:20 Yuto:初めまして、何で死にたいの?
2021/3/15 20:24 mako:もう生きてるのが辛いの
2021/3/15 20:27 Yuto:そっか。ところで生前臓器移植って知ってる?
薄暗いどこかの建物の地下に、たくさんの水槽が並べられている。
それを眺める1人の男がいる。足には鉄の鎖が巻きつけており、部屋の中はどこにでも移動できるギリギリの長さがある。
腕には大量の注射痕があり、右目には黒の眼帯が装着されている。
部屋の隅には最新モデルのデスクトップ型PCが設置されてスリープモードの壁紙が不気味に動いている。
男は水槽を見渡し、水槽に貼られたシールをひとつひとつ丁寧に撫でていく。
そして、椅子に座ってPCを起動する。デスクトップの壁紙にはリライフテクノロジーという文字が表示される。
男はひとつため息をついて、SNSアプリを立上げる。
検索バーに「死にたい」と入力して、念入りに投稿を探す。そして、見定めたユーザー名を誰かのアカウントに教えている。
それも複数のアカウントにだ。その挙動をただ、時間が許す限り繰り返しているのだった。
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