牛丼弁当

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牛丼弁当

友達の知り合いの友達に吸血鬼がいる。 かつて通った女子大のゼミの同窓会で、そんな話題に興味を持つのは私ぐらいしかいない。話に食らいついた私は、その場で電話をかけ、そいつの友達の知り合いまで辿り着き話を聞けたのだ。 「すいません。突然お電話して。吸血鬼のお友達がいらっしゃると伺ったので」 「あ。うん。いるよ。会いたいんだってな。雑誌の人だよね」 「はい。お会いできそうな方ですかね」 「うん。会ってくれるんじゃない。大丈夫だと思うけど」 「あの。なんというか、ガセじゃないですよね」 「え?ああ。まあ、普通信じないよね」 「ええ。ちょっと会ってみるまでは」 「ははは。連絡してみるよ」 「ありがとうございます。あの」 「何?」 「危険じゃないですよね」 「え?なんで?」 「噛まれて私も吸血鬼にされたりとか」 「ぶはははは」 「え?」 「ああ。会えばわかる」 そして、今日。 夜の7時。 東小金井駅東口。 吸血鬼本人から駅に着いたら電話するように言われていた私は、お互い夕飯がまだだったことを確認し、駅前の牛丼屋で弁当を二人分買ってくるように頼まれたのだ。 吸血鬼って、牛丼なんて食べるんだな。
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