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くぐもった声でふいに呼ばれて、少し驚く。
「おはよ」
ベッドの上の掛け布団がもぞもぞと動いて、目の前に卓が顔を出した。
「……起きるの、早くない?」
「卓も起きたら」
「いやだ」
「早起きって得すんだよ」
「土曜日って寝るために存在してるんだよ?」
のろのろと眠そうな声が耳元で聞こえる。
「卓が一日中寝ようって決めてるのが土曜ってだけでしょ」
今にも鼻と鼻がぶつかってしまいそうなくらいに近くで、卓が瞼をゆっくりと閉じる。
「……」
まだ眠るつもりなのだろうか。とくに起こす理由もないし、実を言うと、予定のない土曜日に早起きをしたところで何を得するのかということについては思い浮かんでいなかった。もう一度眠り直しても罰は当たらないだろうという結論にたどり着いたとき、閉じたのと同じ速度で卓の瞼が半分まで開く。
「一緒に寝ようよ」
「わかった」
僕には、恋人がいる。
生真面目で、いつも真面目すぎるくらいに真剣な目をしていて、他人に優しく、自分に厳しく、芯の通った一途な男だ。
「凪」
「ん?」
腰を上げてベッドに乗ると、卓に腕を掴まれる。へなへなと笑う卓が口を開く前に、その思考は透けて見えた。
「えっちしよ」
頬に何かが当たる。横目で窓の外を見る。また降り出したようだ。息を吐いて窓を閉め、卓に視線をやる。
「……いいよ」
僕と目が合った途端に、卓は微笑む。
彼は、三原卓は、僕のセックスフレンドだ。
卓が「早起き特になったぁ」と呟く。得なのかどうかはわからないけれど、罰は当たるかもしれないと思った。
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