悲劇構成会議

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山の奥から人間界を覗き、今日もちまちま役目をこなしていると、特別会議の案内状が郵送された。 主催者は〈悲劇の神〉。悲劇に関わる神を統括する、御大将とも言うべき――というか、皆が大将と呼んでいる――偉いさんだ。案内状には難しいというか堅苦しいというか、読みにくい言葉がもじゃもじゃ書き付けられていたが、どうやら昨今の悲劇の現状を憂い、行動を起こしたらしい。 会議というのだから、今後の悲劇の展開をあれこれ考えることになるのだろう。いささか面倒だ。他所の神と話すのも気が滅入る…… とは言え、それぞれの神が勝手な判断で悲劇を盛り上げて、収集がつかなくなることも多い。具合のいい協同が大事なことは分かっている。分かっているけれど、それと面倒なのは別だ。 会議は早速明日、北方の海にある孤島で行われるらしい。そこなら滅多に人間も訪れないとの判断だ。別に、人間に見られたところで大した問題になるとも思わないけれど。そもそも、人間が同族と神々を見分けられるかが疑問だ。 明日というのも困る。こっちにも事象を引き起こすタイミングってものがあるんだ。悲劇の質を高めるならば、誰だって完璧なタイミングで人間に災いを与えたいものなのに。 段々腹が立ってくるわ、興が乗らないわで、その後は全然仕事をこなせなかった。野草と木の実ばかりを口にして、そのまま洞窟に寝転がる。社だの神殿だのを人間に用意して貰っている神々が羨ましい。 場合によっては、僕も自分の役目を誰かに譲って、分野を変えてみようか。ひょっとすると、案外人間に信仰されて、いい食べ物も食べられるかもしれない……とは思うが、それも結局上手くいかない気がしてくる。肉や酒ばかり献上されても困るし、演舞や決闘を見ても今更つまらない。人間を捧げ物になんてされたら、それはもう最悪だ。どう相手取ればいいのか分からない。 これはちょっと過剰な心配だが、まぁ、どの道を取っても何かしらの問題が生じるということだ。僕は僕にできることをしよう。 ただ、あぁ、面倒だなぁ。
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