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ガタンゴトン…ガタンゴトン…
満員電車の中、仕事場に向かう私は重い頭と体を無理やり持ち上げながら窓の向こうを眺めていた。
窓からは、朝の晴れ晴れとした水色の空、鳥もパタパタと羽ばたいている。
電車の中に目を向けていると、資格の本らしき物を読んでいるスーツを着た会社員の女性や英単語の本でテスト勉強をしている学生がいた。
私は、この光景をじーっと見つめる。みんな、何かに頑張っているのだな。
一方の私は、新入社員は、新人研修でガミガミ叱られ、精神をすり減らし、もう何もかもやめてしまいたい、辛いと思っている。
私もこうしちゃいられないな。このままじゃだめだ。
私は、鞄からスマホとイヤホンを取り出し、イヤホンジャックに刺すと、サブスク配信の音楽アプリを開き、好きなバンドの音楽を聴く。
アグレッシブなドラム、テクニカルなベース、美しいピアノ、力強い歌声、カッコイイ歌詞…
大好きなこのバンドの曲を聴くと、この物語の主人公になれた気がした。
そして、気がつくと、頭と体が少し軽くなっていた。
【次は、名古屋、名古屋…】
イヤホンに聴こえる音楽越しに電車のアナウンスが、私が降りる駅の名前を告げる。
よし、今日はひとまず頑張ろう。私は、イヤホンを巻き、スマホを鞄にしまうと、人混みの中ドア付近に向かった。
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