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リストラ
「ちょっと待て!」
勉は叫んだ。頑張れば報われると思っていた。新卒で入社した会社に定年まで勤めあげることが、正しいサラリーマンの形だと教えられた。それなのにだ、、、
「えー、河原くん、ちょっと人事部まで来てくれ。」
河原勉(かわはらつとむ)は旅行会社に勤める48歳。今、突然人事部に呼ばれた。普段人事部に呼ばれるとしたら、異動の内示がある時くらいだ。
「河原くんね、今月末付けで会社辞めてもらうよ。」
「、、、え?」
「えじゃないよ。今会社は新型コロナウイルスの影響でものすごい赤字なんだ。社員を今まで通り養うことはできない。」
人事部長・近藤海(こんどうかい)の言葉は信じがたいものだった。近藤は俺と同期入社だが、頭がキレるやつで、出世が格段に早かった。
「ちょっと待て!俺たち同期だろ?残酷すぎないとは思わないのか?!」
「仕方ないだろ、、社長命令だ。俺だって言いたくて言ってるんじゃないんだよ。」
「この会社で、定年まで働けって言われたのは嘘だったんだな、、クビ切る時は一瞬。それでいいのかよ?」
近藤は黙って下を向いている。
「わかった、出ていってやるよ!ただ、俺のこと覚えておけよ。辞めさせたことを絶対に後悔させてやる!」
そう言い切ると河原は会社から出ていった。60歳までの残り12年間。河原は何としてでも会社を見返す12年間にすると、心に誓った。
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