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自慢の娘
「幸人は俺の自慢の息子や」
娘がかわいくてたまらない父親の話はよく聞くけれど、息子を褒め続けられる父親って、なかなかいないと思う。だからそれは希少な父親の愛情表現で、息子として素直に誇りに思うべきだったのだろう。でも、その父の口癖がずっと苦手だった。だって私、宮本幸人は、本当は息子なんかじゃないから。
今は亡き母は、子宮の中で私を作り間違えたらしい。生まれてきた私の股間には余分なものがついており、成長しても上半身にふわふわのふくらみは形成されなかった。まあ記憶にある母も貧乳だったから、私が正しく作られていたとしてもどのみちぺったんこだったかもしれないが。
つまり私は、中身は女なのに、男の体で生まれてしまったのである。
父はまだ、そのことを知らない。
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