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#09. ALIVE
幻想的な映像と共に流れるジャズ風のジングル曲。BSの深夜番組── 富田優司が司会を務める音楽情報番組のオープニングである。
映像は本日のコンテンツ、番組のスポンサー紹介と続き、スタジオセットに切り替わった。
奥行きを持たせた、濃紺で統一されたセット。洒落たバーにあるような脚の長い、まるい小さなテーブル。その左側の斜め後ろに、これまた脚の長い椅子に腰掛けている男性が画面に向かって会釈をする。
富田
「こんばんは、富田優司です。今週もよろしくお願いします。
皆様、大変永らくお待たせいたしました。今週は予告してきたとおり、私に縁の深いあのお方をゲストにお呼びしております。
今日はスペシャルバージョンですので、CMの後早速登場していただきます──」
「…… はい、カット!名取橋さん入ります!」
フロアディレクターの合図が掛かり、スタッフが優司の反対側に同じ形の椅子を用意する。それとほぼ同時に、漆黒の皮の上下でビシッと決めた、いかにもロックスターと言う風貌の名取橋崇志が現れる。
「よ!ユウちゃん、久しぶり」
セットに現れるとすぐに優司に近寄り、右手を差し出す。
「ご無沙汰しております。よろしくお願いします」
立ち上がり、崇志の右手を両手で受け止めて深くお辞儀をする優司。
本来ならば事前に楽屋での挨拶を済ませておくべき場面なのだろうが、そこは遅刻魔である崇志。スタジオ入りが収録開始の直前になってしまったためにそれは叶わず、本番のセット上での再会となってしまった。
「本番行きま~す!5秒前……」
フロアディレクターのカウントダウンの後、画面に向かっている優司が喋り出す。
富田
「今夜はロックバンドETERNAL TIMESのボーカル、名取橋崇志さんにお越しいただきました。ナットさん、よろしく」
名取橋
「こちらこそよろしく。久しぶりだねぇ、ユウちゃん」
滅多にテレビなどのメディアに顔を出すことのないETERNAL TIMES。
その中心人物であるボーカルの崇志が、深夜のBSとは言え出演することなど異例中の異例。
「ユウちゃんの番組だからね」と、無条件でゲスト出演を快諾した。
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