Bonus Track. MY HOME TOWN

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《そんなスウィングバイ効果を惜しげもなく発揮して、新生OffShore DreamとGalileoは切磋琢磨するように快進撃を続けます。  渋谷を中心にライブハウスやステージのあるレストランなどでのステージを続けるうち、『渋谷の奇跡』と呼ばれるようにさえなっていました。  しかし…そんな彼ら── 特に優司さんを面白く思わない人もいました》 「過去にはスタジオでバイトしていた僕を、制作側に取られるんじゃないかと思って大学を辞めさせてまで、地方で喋りの修行をさせるような人ですよ?素能子ちゃんは。  でも、ちゃんと話しました。自分の気持ちを。このミュージシャン活動も、きっと必ずラジオでの活動のプラスになるはず。  逆にラジオを通して様々な音楽に精通している僕だからこそ、できる音楽がある、って。なんて言うんでしたっけ?ホラ、探査機が星の重力を使って加速する──」 『スウィングバイ?』 「そう、それ!必ずDJとしての活動のプラスになるはずだから。って、説得しましたね。  当時はまだ、ヒップホップとかクラブDJとかの黎明期でしたから。皿回しと音楽って、似ていてもどこか別のような扱いだったんですよね。  それらが融合を始める兆しはありましたから、それで素能子ちゃんもわかってくれたんだと思います」 《生活の重心が音楽に傾き始めていた優司さん。ちょうどその頃、真樹さんとの生放送番組も午後の看板番組も降板。ラジオのお仕事は週に1度の生放送と、収録の番組を持つのみになっていました。  そんな時です。真樹さんが交通事故に遭われます。  容態は深刻なものでした。真樹さんは何日も生死の境を彷徨い、やがて目を覚ましますが。その両脚に重度の後遺症を残してしまいます。ピアニストとしての活動をしながら、優司さんは真樹さんのサポートを続けました。  ラジオ局に復帰できるお膳立てをしたり、真樹さんが生活できるようなバリアフリーのマンションを探し回ったり。実家から来ていたお母様に代わり、真樹さんの病室で寝泊りすることも少なくありませんでした。
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