Bonus Track. MY HOME TOWN

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 ジャンクション本社のスタジオにある窓から、階下の景色が映る。隅田川が見える東京の夜景。  まるでフォークで巻いたスパゲッティのように、複雑かつ滑らかに車線が入り組む首都高速をいくつものヘッドライトとテールランプが通り過ぎて行く。 《DJ富田優司、ピアニスト富田優司のゴールは、ここではありません。きっと優司さんはこれからも時代の風を読み続け、走り続けて行くに違いありません》 『最後に、今の若者達に一言』 「僕達が育った頃って、まだ『戦後』の色が残っていたと思うんです。  いい会社にいる人がいい人だ。いい会社に入るためには、いい大学に通わないといけない。いい大学に入るには、勉強ができないといけない。  だから学校で5教科ばかりを詰め込まれる。それが当たり前の時代でした。それで良かったんです。  ちょうどコンピューターが普及して来た頃でしたから。コンピューターを操るためには、頭が良くないといけませんからね。  でも時代は変わりました。今やコンピューターは進化し、AIなどと呼ばれて人間の代わりになろうとしています。これからの時代、勉強ができるだけではAIに負けてしまうんです。  AIに負けない── AIにはできないことができるようにならないと、これからの時代は生き残って行けなくなるでしょう。  ではAIに負けない何かとは何か。それは人間らしさです。人にしか与えられていない『感情』です。  僕は占い師ではないので、それが具体的になんなのか。これからの時代、どんなことが必要になって行くのかはわかりません。  ただ、『芸術』ってその人間らしさの最たるものだと思うんです。芸術を()でる、嗜む喜びは機械にはわかりません。  音楽家(ミュージシャン)のことを芸術家(アーティスト)と呼ぶ人が多いように、音楽も芸術の一部を担っています。昔の人からずっと積み上げられてきた、かけがえのない大切なものです。
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