#09. ALIVE

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「バンドの、誰?」  ヤスヲの質問に凄味が増す。 「…… ヤスヲさん…… 最終兵器って、もしかして」  そこにヤスヲが控室に向かって目配せをする。それが合図だったかのように控室のカーテンが開いて1組の男女が現れ、そして歩み寄って来る。  優司は暗い店内に目を凝らす。2人とも見憶えがある人物だ。男性のほうはドール・プロモーション社の営業、幸崎(こうざき)さん。え?幸崎さん?  黒縁のまるい眼鏡を掛けた長い黒髪の女性は、美菜子ちゃん。え?美菜子ちゃん! 「久しぶりね、ユウちゃん」  垂れてくる鼻水をすすりながら、搾り出すような声で優司の前に立つ美菜子。 「美菜子ちゃん…… どうして……」 「まぁ、座りなよ、2人とも」 「ヤスヲさん…… あなたって人は……」  登場した美菜子が泣いていることで、ヤスヲも事の重大さを感じたようである。 「ゴメン…… とりあえず飲もうか」  ETERNAL TIMESのボーカル、名取橋崇志のバックアップにより鳴り物入りでロックシンガーとして歩み始めたばかりのヤスヲ。  2枚目となるシングルのレコーディングも終え、アルバムの製作にも取り掛かろうとしている。  そんなヤスヲであるが、違和感を感じていた。  オレは本当に、ロックシンガーが性に合っているのだろうか……  崇志の弟分と称してデビューしたこともあり、興行的にもまずまずのスタートを切ったヤスヲ。何を今さら悩むことがあると言うのか。  そんな矢先の、呼ばれたラジオ番組『ジャム・ジャム・ジャンクション』での優司との出会いは衝撃的なものであった。  同じ高校出身で、3学年下にあたる優司。東京にいても、その噂が耳に届いていたジャズバンドのピアニストだったなんて。これを運命だと言わずに、なんと呼ぶのか。  そして。たまたまヤスヲが入ったジャズバーで、さらなる運命的な出会いが待っていた。
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