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「お前は、つまらん女やな」
私は独りぼっちになった。追い縋っても無駄だと分かって諦めた。
彼は自分の荷物を全部持って出て行った。部屋には、いつも彼に寄り添っていた個性の半分だけが残った。それは興味もないのに彼に合わせていた多趣味の残骸だった。
涙の中に色が見えた。その色は泥水のように混濁していた。
貴方色に染まりたかった。好きだったから。自分自身を捨てた訳じゃなかったけれど、あなたの好みに合わせて変わることは苦じゃなかった。
食べれなくなった。今までダイエット出来なかったのに簡単に痩せてしまった。髪の毛も短かく切った。だけど何をやっても失恋の痛みは消えなかった。
厚化粧をするのもやめた。もはや興味のない趣味の残骸や、背伸びしながら着ていた洋服を全部捨てたら、普段着のシャツとジーンズしか残らなかった。びっくりした。鏡の中の私はまるで純朴な少年みたいだったから。
少しだけすっきりしたけれど、物が無くなったら自分の全てが消えた気がした。私の色は流行って呼び名の金で買える個性でしかなかったって虚しくなった。あれだけ尊敬していた彼の個性も都会の先端の受け売りでしかなかったことにも気がついた。
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