1人が本棚に入れています
本棚に追加
いつもと同じように学校へ行って、いつも同じように授業を受けてきた。
これからの予定もいつもと変わらない。家に帰ったら父さんと適当に会話をして、晩御飯を食べて、宿題を済ませたらお風呂に入って眠るだけだ。
欠伸をして、空を見上げる。淡いオレンジ色に染まった雲が漂う空も、普段と全く変わらない。
胸の奥底に、じわりと嫌な感覚が滲む。
いつもこの時間になると、なんだか胸の奥がざわざわする。理由は分からないけど、あの夕焼け空を見るたび、何となく怖い気持ちに――
――あれ、“怖い”って何だっけ?
視界の端で、空が波打ったような気がした。気のせいだろうと思いつつも、私は目を凝らして空を見つめる。
違う、気のせいなんかじゃない。私が見る景色の中央で、また揺れる。しかも少しずつ、波が大きくなっている。
びし、と嫌な音がして、空が割れた。薄いガラスの破片のようなものがばらばらと落ちて、空に黒く小さな穴が空く。その奥から黒いインクのようなものが滴り落ちて、びちゃりと嫌な音と共に着地する。
暖かい日なのに、強い寒気を感じた。全身が強張り、足が勝手に後ろへと下がろうとする。
地面に降り立った黒い何かは、蠢きながら徐々に形を成していく。やがてそれは人に近い形になると、両手を地面につけてよつん這いの姿勢になった。
頭と思しき箇所がぐらりと揺れて、一気にガクンと下を向く。逆さまになった顔をこちらに向けながら、かさかさと虫のように手足を動かしてこちらに向かってくる。
最初のコメントを投稿しよう!