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「なお。行こ」
こんな状況なのにさ
全く動揺のない杏花が
ああ、事実なんだなって思い知らされる
俺は2階の階段を上がりながら
杏花を追いかける
「どっちの部屋にする?」
杏花が隣同士の俺達の部屋を指さす
「どっちでもいい」
「じゃあ、なおの部屋。おじゃましまーす」
杏花は凄く普通だった
今こういう状況なのに
俺は混乱していて、状況が理解できなくて
早く話して欲しかった
「久しぶりに入った、なおの部屋。部屋が男の子っぽくなってる」
「姉ちゃん」
「・・・」
「ここ座って早く話せよ」
「うん」
「4年前だったかな。私がお父さんたちに家族の縁を切らせて欲しいってお願いした。」
そんな前から?
「たくさん話し合って、お父さん達は私が高校を卒業するまでは養わせてくれって。だから高校を卒業して就職を機に私は正式に養子縁組を解消して家族から抜ける」
「なんでっ・・・姉ちゃんは嫌いだった?俺達が」
「まさかっ。好きだよ」
「だって離れたいんだろ?家族やめたいんだろ?」
「好きだからね」
「意味わかんねー、好きならなんで今更家族から
抜けるなんて・・・」
「好きだから、だから家族から抜ける」
「・・・・」
「うちの家族大好きだよ。お父さんのこともお母さんのことも・・直己のことも。だから他人になる」
「・・・」
「大好きだから他人になりたい」
「俺も好きだよ・・・・家族みんな」
「うん。わかって?直己」
「・・・・」
俺は無言で頷いた
杏花は、ふふって小さく笑って項垂れてた俺の頭を2回撫でた
杏花、好きだよ
行かないで
俺は項垂れながら心の中で呟いた
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