離れるなよ、バカ

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それから春になって 本当に杏花は家を出て行った。 他人になって。 遠く離れた町の不動産会社の事務の正社員に就職したらしい。お母さんが言ってた。 いつからそんな遠くの求人探してたんだか あー、なんなんだよ 俺と会えなくなること 俺と繋がりが無くなること あいつにはどうでもいい事だったんだな 俺は中学3年生になって、志望校を聞かれたが 正直どこでも良かった。 全てがどうでも良くて、勉強はそこそこできた方だったけど、俺は自暴自棄になっていたから。 ただただ惰性で生きてた夏のある日の夜、 父さんと母さんが俺を呼び出した そして父さんが 「これから家族会議をするから。2人とも座って」 と、ダイニングテーブルに俺と母さんを座らせた 「なに・・・」 「父さん、転勤願いを会社に出しているんだ」 「転勤?」 「母さんには話したんだが、もし承認がおりたら 来年の春、この町にある支店に移動したい」 そう言って父さんの会社のパンフレットを差し出された 父さんは大手企業で自動車販売の営業をしている。 全国各地に支店はある。あるけど・・・ 「ここ?」 「そう」 「ここって・・・」 たくさんある支店名の中に蛍光ペンで印が付けられていた、その支店の場所を見て俺は固まった 「杏花の住む町にみんなで住まないか?」
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