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愛する人へ
もうそろそろ、僕の計画が始まる。
死ぬ前に計画してた。
早くしないと、久美ちゃんが死んでしまいそうで心配だ。
そんな事を思っていた時だった。
ピンポ~ン
家のチャイムが鳴った。
久美ちゃんが、ゆっくりと玄関のドアを開けると、そこには大きな花束が、お花屋さんのお姉さんの手によって差し出された。
「お花のお届けものです。」
「えっ?誰からですか?」
「実は以前に旦那様が当店に来られて予約注文して頂いたんです。旦那様が、僕が死んだら連絡するので、お2人の結婚記念日の今日、このお花とこの手紙を、奥様にと。連絡は旦那様が頼まれた、看護師の小林さんから頂きました。旦那様は、とても嬉しそうに、奥様との馴初めや思い出を語っていらっしゃいましたよ。とても奥様の事を愛していらっしゃるんですね。」
久美ちゃんは、聞いた途端、膝から崩れ落ち、その花束を折れてしまう勢いで抱きしめ、肩を震わせ涙を流した。
そして、その花束を見つめると、微笑み、
「届けてくれて、ありがとうございます。」
涙を拭いながら、会釈をした。
ドアを閉め部屋に戻ると、すぐに手紙を読み始めた。
***
久美ちゃんへ
手紙と花束びっくりしたかな?
40年目の結婚記念日、おめでとう。
久美ちゃんが、この手紙を読んでるという事は僕はもう、死んでしまったんだね。
きっと久美ちゃん、泣いてくれてると思うけど、もう泣かないで。
久美ちゃんと僕の40年目のルビー婚式までは頑張ろうと思ったんだけど、ごめんね。
久美ちゃん、今まで僕と一緒に居てくれて、ありがとう。とても幸せだったよ。
僕は生まれ変わっても、また久美ちゃんと一緒になりたい。
久美ちゃんの笑った顔が出会った頃と変わらず、いや、それより遥かに増して大好きだったよ。もちろん怒った顔も。
実はね、久美ちゃんが怒ってる時、いつも僕、反省した顔してたけど、実は可愛いななんて思って笑いこらえてた。
ごめんね。でも、許して。
僕が久美ちゃんに対する愛は真実だから。
君は知ってるかな?
僕が記念日の節目に渡した花束に意味がある事を、、
バラは、あなたを愛しています。
マーガレットは、真実の愛。
ピンクの胡蝶蘭は、あなたを愛しています。
そして、今贈った花束を見て。
バラ、カーネーション、ガーベラ、カスミソウ、、
バラは、あなたを愛しています。
カーネーションは、あなたを決して忘れません。
ガーベラは、希望。
カスミソウは、幸福。
僕は君が幸せになる事を望んでいるよ。
いつか誰か、いい人が居たら、その人と絶対に幸せになって。
僕よりもいい人は居ないかもしれないけど、探して。
じゃないと僕が心配なんだ。
僕は久美ちゃんを愛してる。誰よりも、、
久美ちゃんを絶対に忘れないから、、
希望を持って生きていって欲しい、、
そして、久美ちゃんに幸福が訪れる様に見守ってるから、、
ちゃんと僕は、此処に居るよ。
君の側にね。
世界で1番、久美ちゃんを愛する博より
***
手紙を読み終わると、今までしばらく無かった笑顔が涙と共に溢れる。
「博くん、ありがとう。私も愛してるわ。ずっと忘れないわ。」
次の日から、窓の側の花瓶の花束は、1日、また1日と、つぼみだった花が咲き開いていく。
博くんが言ってくれた、メッセージ。
最後は希望、そして幸福。
博くん、私も、生まれ変わっても、また一緒になりたい、、ありがとう。
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