現実と思い出の狭間

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現実と思い出の狭間

僕は病室のベッドの上で自分の身体が日に日に弱っていくのを感じながら、窓の外から見える、お花屋さんをボーッと見つめている。 僕は2ヶ月程前に余命3ヶ月と宣告された。 何故、僕なんだ。 まだ死にたくない。 まだまだ生きて妻と、もっともっと色んな事がしたい。 もうすぐ、結婚40年目のルビー婚式だと言うのに何故、今なんだ。 これから先の節目のお祝いは、まだまだ、、 結婚75年目のプラチナ婚式まであるというのに、、 やり場のない感情、 悔しくて、悲しくて、、 妻と会えなくなると思うと寂しくて、、 涙が溢れ出て止まらない、、 でも、妻の為に強くいなければ、、 僕が悲しむと妻も辛いだろう。 *** 僕は、山本博(65歳)、妻は、久美子(65歳)。 僕達は同級生で20歳の頃に大学で知り合った。 大学内で、久美ちゃんを見つけた僕が一目惚れして、声をかけたんだよな。 自然と笑顔になる。 大好きな久美ちゃんの事を考えているだけで、身体の痛みも和らぐ気がする。 僕は久美ちゃんに急に話しかけたもんだから、ビックリして 「はいっ!何でしょうか!?」 ってビックリした顔してたな。 驚いた、久美ちゃんも可愛かった。 その後、久美ちゃん、連絡先を教えてくれて、やり取りする中で、どんどん仲良くなっていった。 僕の直感は間違ってなかったんだ! 今でも変わらず、彼女を愛していて、 そして、飽きない。 時が経つにつれて更に愛しさが増している。 久美ちゃんは気が付いていただろうか? 僕のメッセージを、、 結婚4年目の花婚式 僕は自分の書いた詩集と赤いバラの花束を贈った。 赤いバラの花言葉は、あなたを愛しています。 久美ちゃんは、少し目を潤ませて喜んでいた。 結婚10年目のアルミ婚式 僕は古いデザインのヤカンとマーガレットの花束を贈った。 マーガレットの花言葉は真実の愛。 古いヤカンを見て、 「何これ?!」って、 僕は「普通に可愛いヤカンだと、つまらないでしょ。」って言ったら、 「博くんの、その考え良く分からないな。私は可愛いのが良かったけど。」 って冷たく言った後に、 「でもお花は綺麗。ありがとう。」 冷たい表情から一気に可愛い笑顔を見せてくれた。 危なく、記念日が酷い記念日になる所だった。 結婚25年目の銀婚式には、 お揃いの時計とピンクの胡蝶蘭を贈った。 ピンクの胡蝶蘭の花言葉は、あなたを愛しています。 花婚式と花言葉は一緒だが、ズッシリと大きな鉢植えに品のある胡蝶蘭が、これから先も、しっかりと2人の未来に根を張っていけるようにと希望、そして、確信を持って贈った。 久美ちゃんは、ビックリして、 「凄い!素敵!」 って喜んでくれた。 そして、 あと、2ヶ月後には40年目のルビー婚式 僕は、あと、2ヶ月生き抜いて久美ちゃんに花束を贈る事が出来るのだろうか、、 僕は静かに目を閉じた。
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