一章 灯火は幸せを包み込む

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エピソード オブ (ワン) 乙木学園七不思議 〜マッチ売りの少女伝説〜 かつて乙木学園で起きた物語。 ある所に一人の少女がおりました。 その少女の家は貧しく、クラスメイトに大変酷くこき使われていました。 少女は哀しくなりました。 私はただ、みんなと友達になりたいだけなのに… しかしその想いがクラスメイトに届くことはありません。 毎日繰り返されるのは、クラスメイトから無理やり押し付けられた雑用ばかり。 少女の周りには、誰一人として味方は居ませんでした。 ある日のことです。 少女は月夜の元、マッチの入った箱を見つけました。 次の日、花園の花の手入れを少女は押し付けられています。 季節は冬。 凍える寒さの中、少女は花園へと足を踏み入れました。 花園は寒く、冷えきった空気は少女へと突き刺さります。 そんな中、少女は花園の最深部までいかなくてはなりません。 少女はあまりの寒さにポケットへと手を入れました。 ふと、カタッとナニカが彼女の指先に触れます。 取り出してみるとマッチの箱でした。 中を覗いてみれば、数本のマッチが入っています。 少女は思いました。 気休め程度にはなるかもしれない。 少しだけ、花園の最深部までいくまでだけでいいから温まりたいと。 そう思い少女はマッチ棒をとりだして、それを擦りました。 ぼぅ、とマッチ棒の先端に小さな炎が灯ります。 少女は火が消えてしまわないよう、そっと空いた方の手で炎を包み込みました。 そして、ゆっくりと最深部まで歩きます。 寒い中、マッチに灯された炎だけが少女を暖かく迎え入れてくれました。 そして不思議なことに、少女が花園の最深部まで辿り着くまで炎が消えることはなかったのです。 少女は、最深部まで辿り着きました。 その途端、マッチに灯された炎がユラと揺らめき、少女を優しく包み込みました。 少女は驚きました。 何故か、少女が火傷を負うことはありません。 不思議だと少女は己を囲う炎を、見つめ続けました。 すると、少女の前に少女と同い年くらいの女の子が現れたのです。 少女は驚きました。 女の子が言います。 「はじめまして、今日から私はアナタの友人よ。もう、寂しくないわ」 女の子は少女の手を取り握り締めました。 温かい女の子の手に少女は泣きました。 心が満たされたのです。 少女は、孤独という【呪い】から解放されました。
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