一章 灯火は幸せを包み込む

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「どうします?玲依ちゃん」 未夢が玲依へと問いかける。 あわいが去り二人になった玲依と未夢は、二人で夢燐寸の話をしていた。 「そうだね、ひとまず夢燐寸は探したいかも……それもだけど、大丈夫かなあわいちゃん」 さっきは様子がおかしかったから。 心配そうにぼんやりと、昼ごはんを食べ終わった二人は学園の地図を広げながら校舎の中でどこにマッチ箱がありそうか話している。 「きっと、大丈夫なのですよ。もしかしたら調子が悪かったのかもしれないのです。うーんと、理科室や調理室のマッチとかはどうでしょう?」 一番マッチが沢山収納されていそうなところ。 そんな教室を未夢は、候補にあげる。 「そうだね。最近部活が忙しそうだったから…それかな?…ところで、未夢ちゃん。他にさ、夢燐寸の特徴ってないの?」 次会った時には、少しでも元気になってくれると良いけど… 心配だなぁと思いつつもふと、玲依が問いかける。 その問いかけに未夢は確かにと頷く。 「そうかもしれないのですよ。次会った時には、二人で抱き締めましょう。………ちょっと思い出してみるのですね」 さっき同学年の子が話をしていた噂を思い出そうと、未夢はうーんと首を捻った。 そして、何かを思い出したかのようにあ、と呟く。 彼女のくりくりとした小動物のような愛らしい瞳が、さらに大きく開いた。 「もしかして、何か思い出した?」 興味津々に玲依が問いかける。 その言葉に得意気に未夢が頷いた。 「たしかそのマッチは特別で、火をつける部分、頭薬でしたっけ…?よくわからないですが、そこが金色になっているらしいのです」 金の卵みたいだって言っているのを聞きました。 その言葉にへぇ、と玲依が呟く。 「金色…?珍しいね。金の卵くらいに金色だなんてさ…これは比喩なのかな?それとも本当に金の卵みたいに金が使われているとか…?うぅん、どうなんだろう」 わからないや、と玲依が顎に手を添える。 何かの引っ掛けなのかもしれない。 うーん、と唸った。 「だからうちの学校の、七不思議の一つになっているのかもしれないのですよ。金の卵みたいに夢のようにキラキラしているから、夢燐寸って言われてるんじゃないでしょうか?」 本当に金色なら、素敵なのです。 そう穏やかに未夢は笑った。 「……そうだよね。そうなると、普通のマッチじゃ無いってことかなぁ。だったら見つけるのはかなり困難じゃないかな…見つけられるか心配になってきた」 思わず弱音を吐いてしまう。 でも、玲依はどうしても夢燐寸を見つけたかった。 出来るのなら、この悪夢から、呪いから一刻でも早く解放されたいから。 真剣な眼差しで地図を見つめ続ける。 「………もしかして、実際に色んな教室に足を運んだ方が早かったりして」
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