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「いいや? ただ、二人はどこまでいってるのかって聞いただけだぞ?」
「はあぁッ? ふざけんなッ!」
顔を真っ赤にして花火はお盆をテーブルに置くと、「セクハラで訴えるぞッ!」とお父さんに飛び掛かっていった。僕はといえば、ついさっきのことを思い出してしまって、今になって羞恥心が襲ってきて顔を熱くしていたのだけど。
取っ組み合いの喧嘩になりそうになったところで、チビが見かねてか二人の間に身体をぐいと割って入って「にゃあ」と濁声で鳴いたので、親子喧嘩はすぐに収まった。
花火の作った朝食を食べた後、持ってきていた服に着替えて家を出た。今日は、花火と久しぶりの映画鑑賞だ。……というか、久々のデートと言うべきなのだろうか。
「今日の映画って、またアメコミのだよね?」
「そ。前に見たアメコミヒーローの一人が主役のやつ! 俺あいつが一番好きでさ」
前回はヒーローが大勢出てきたが、事前に調べた内容だと元々はそれぞれ別の漫画の主人公らしい。今回の作品は元の漫画の内容の一つが実写化したと捉えた方がいいようだ。
「一温はどいつ好きだった?」
「えっと……戦闘用の機械のスーツを身に纏った社長の人……かな?」
特に誰がというのも無かったけれど、あえて言うなら、という感じで答えたのに、花火が「一温ってああいう渋いのがタイプなのか」と話が大きくなってしまった。
「……マジか。俺と全然タイプ違うじゃん」
「そういう意味で好きって言ったわけじゃないんだけど……」
微妙にへこんだまま映画館に辿り着く。今日はあらかじめ席を予約していたので、機械でチケットを発券した。あと二十分くらいで開始だからかフードのコーナーには列ができている。
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