彼らの思い遣り

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 濱津が出勤してきて課内を見回した。  いつものように先に出勤していた溝田はパソコン画面から、一瞬顔を上げて笑顔で挨拶を返した。  いつも通り。先週のような強張った顔ではない。  大山崎がいつもの無表情で挨拶を返している。  それに対して、顔を赤らめながらも愛し気に見ているのが見て取れて、溝田はホッとした。  歓迎会の後、溝田は意図的に濱津のアパートに大山崎を置いてきたのだが、先週はそのせいで混乱しているみたいだった。  それが、どうやら昇華できたようだ。  ほどなくして何人か出勤してきて、皆が挨拶を交わす。  給湯室から女子と高村の笑い声が聞こえる。  加藤が入ってきた。課内の全員が大きな声で挨拶をする。 「おはよ~。今日もみんな元気だねぇ」  のほほんとした空気の体型も顔も全てが丸っこい係長がニコニコと挨拶を返して席に着く。 「係長~、ナイスタイミングです。ちょうどコーヒー入りましたよ♪」  給湯室から高村が出てきた。西村、鈴木が続いて出てきて、いつものようにコーヒー・お茶を配り始める。  高村がすっと濱津に寄っていき何やらそっと耳打ちして、笑顔で去って行く。  濱津は真っ赤になって熱い紅茶をすする。  勘のいい高村は、濱津が何かを吹っ切ったこと気付いているのだろう。濱津の高村の背を見る目には少し戸惑いが見て取れる。  高村の声が聞こえたのかどうかはわからないが、濱津の隣では大山崎が頭を抱えるようにしてスケジュールを睨んでいる。 「うへっ、高村ちゃん、ナニコレっ、超苦いんだけど!」  コーヒーを一口飲んだ西村が大声を出す。 「朝からぼんやりしてるから気合よ!気合!」  こちらも最近、想いを叶えたらしい。浮かれているのを面白がってみんなの視線が集まるのを照れ臭そうに笑って返した。 「ゲンキ~、エレベーターホールまで声が聞こえてたわよ~」  坂上が笑いながら入ってきて、一緒に辻谷も入ってきた。課員一同、一斉に挨拶をする。
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