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加藤はいかにも人の良さそうな顔を心配そうにさせて晴夫の顔をのぞき込んできた。
この柔らかい表情に、つい喋ってしまったことを色々と思い出す。
そう、カラオケでは歌いもせずに加藤に縋って、瑠加のような女性じゃないと自分はダメなのかもしれないとこぼしたのだ。
「僕のせいで全然歌えなかったですよね? すみません」
酔っていたとはいえ、情けなくて、そんな自分を思い出したくなかったと思った。
「いいよ、僕は君たちが楽しんでくれたら良かったんだからさ。君も僕にぶちまけて気が晴れたんだったらよかったよ」
「すみません。ありがとうございます」
晴夫は頭をさげ、それから確かめておきたいことを聞いた。
「あの、僕、相当酔っぱらってたみたいで、記憶が所々曖昧で…。カラオケに行ったメンバー、誰だったかわかりますか?」
「んー、溝田、高村、大山崎…、西村もだったかな? もしかしてお前お金、払わなかったのか?」
「違います。それはちゃんと払ってますから」
慌てて定食を食べ終えて、同期の大悟を探しに行くことにした。
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