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大悟に打ち明けたのは同期である信頼感だった。彼は答えをくれはしない。ただ晴夫の言葉を聞き、晴夫の中にある答えを導きだしてくれるのだ。
自分が目覚めた性癖を大悟が否定しなかったことが救いだった。
瑠加と別れてから最初に付き合った子と別れた時、大悟とホテルに行ってみようとしたこともある。
大悟が提案したのだ。
したくて堪らなかった。
このイケメン相手ならできるかもしれないと思った。それくらい晴夫にとって大悟は頼りがいがあり、心許せる男なのだ。
あの時、晴夫がホテルの前で怖じ気づかなかったら、今頃二人の関係はどうなっていたのだろうか。
そのことがあったから、誰でもいいわけじゃないんだと思うようになって、それで性欲は落ち着いたと思っていた。
縋って甘えたい気分を振り払うように、肩に乗った大悟の腕をはずして歩き出す。
「僕、相当飲んでた?」
「二次会ではどうだったかしらないけど、カラオケではちょっと強めのカクテルをだいぶ飲んだみたいだったな」
言われて思い出そうとしたが、なにも浮かんでこない。
「波奈子ちゃんと別れてからもう三ヶ月だっけ?」
「そうだよ。バレンタインの直前だったからな。GW開けて三ヶ月経った」
「そろそろ欲求不満?」
「別に恋人がいなくったって…」
オナることはできる。そう言いかけてやめた。
それが問題なのだ。
瑠加に調教されたせいで、後ろなしではイケない体質になってしまった。逆に、後ろを弄れば相手がいなくてもイケる。おかげさまで自慰のためにアナる用のおもちゃをいくつか持っているくらいだ。
アナニーに耽る自分を否定する気持ちはもうない。
溜まった欲望を吐き出す手段は、自分一人の時は何だっていいのだ。
問題は彼女が出来た時だ。
最初のうちはいい。自分がイかずに終わっても、彼女をしっかりイカせられていれば、遅漏を詫びてなんとかなる。
それが晴夫がイかないことを疑問に思われだしたり、彼女の見ていないところで抜いていることがバレたりして、終焉を迎える。
《あたしなんか、いなくてもいいんじゃない?》
《変態プレイに付き合えるほど晴夫君のこと、好きじゃない》
「お前、誰か好きなヤツできたのか?」
「いや」
しいて言えば自分の手が恋人だ。
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