同期

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 欲求不満はないが、快感を求める気持ちはどうにもならない。 「お前、自分から好きになることないもんな。ぐいぐい来られて絆されて好きになるタイプだろ?」 「そうか?」 「そうだよ。だからお前が珍しく泥酔して泣いてるから、誰か好きになったのかなと思ったんだよ」  なぜ泣き上戸になっていたのだろう。誰かを気になっていたりはしない。 「恋愛相談受けたせいかな…。誰かを好きになるのが羨ましかったのかもしれない」  課長の恋愛相談が引き金だったのだろう。 「そっか? お前素直そうに見えて自分の気持ち隠すとこあるからな。しかし、酒好きにもほどがあるよ。お前んちの冷蔵庫、酒と酒のアテくらいしか入ってないじゃないか」  ギョッとして足を止めた。 「え、うち、来たの?」  やっぱりあれは大悟だったのか。 「あったり前だろ! あんなヘベレケなやつ、一人で帰せるわけないだろ」  立ち止まった晴夫をあきれ顔で振り返った。 「何も覚えてないのか?」 「うん、すまん。もしかしてタクシー代…」  ダイニングテーブルにタクシーのレシートがあった。  財布から相当の金額が消えていた。自分で全額払ったのかと思っていたが、二次会で相当飲んだのだろうか。 「お前の財布から割り勘で抜いといたよ。水飲ませたり、スーツ脱がしたり、結構大変だったんだぜ」 「世話かけて悪かったな…」  悪びれる様子のない大悟をまじまじと見つめた。何かあったような感じはしない。 「大山崎にも礼、言っとけよ」 「え?」 「一人でエレベーターなしの5階まで連れていけないからな。アイツも一緒だったんだよ。それとお前の冷蔵庫、何にも入ってないから大山崎がコンビニに買い出し行ってくれたんだからな」  急に、ゾッとして背筋が固くなった。  目の前の如何にも女好きそうな顔のイケメンよりも、あの草食系で性欲のせの字も知らなそうなクールな部下の方が、よほど晴夫のことを抱きしめてくれそうな気がしてきたのだ。  いや、二人が一緒だったなら何もなかったはずだ。 「俺、終電ギリギリ間に合いそうだったから大山崎が戻ってくる前に帰っちまったけど、アイツ、何買ってきた?」  くらくらした。これで決まりだ。大山崎に違いない。  アイツ、何を買ってきた? 「覚えてないんだ…。アイツ、戻ってきたのかな?」  自分の部屋に見慣れない物はなかった。今朝出してきた可燃ごみに違和感なかった。もしかしたら資源ゴミの分別箱に何かあるかもしれない。
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