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普段はクールで無表情を貫いている男が、叱られた子犬のような情けない顔をして今にも泣きそうだった。
晴夫とほとんど変わらない身長のはずだが随分小さく感じる。
華奢で細面で、男らしさのかけらもない。大山崎にオスを感じて、避けていたのがばかばかしい。
今度は虐めているような気分になってきて、苛立つ。大山崎を泣かせたいわけじゃない。
「なんなんだよ」
「怒ってますよね、歓迎会の日のこと…」
大学卒業から2年と少し。たれ目で穏やかな顔立ちで、まだどこかあどけなさが残る。どちらかと言えば綺麗な顔だ。
大悟と話していて、この顔がオスの興奮に染まるのを想像してしまったのだが、やはりそんなモノとは無縁そうに見えて、申し訳ない気分になる。
「覚えてねえんだよ。僕の方が悪かったな。大悟と一緒にうちまで送ってくれたらしいじゃないか」
「はい。でも俺、コンビニに行って、その…」
晴夫の顔を真っ直ぐ見て、言葉を詰まらせた。目が潤んでいる。
「ごめんなさい」
薄い唇を震わせるのを見て、血流が耳の奥で轟々と響いてくる。晴夫はこの男の顔が嫌いではない。この顔に迫られたら断れない気がする。しかし、この顔で男を抱けるのか?
「な、何かしたのかよ?」
覚悟を決めて聞いた。
「…だ、…黙って帰りました」
俯いて、そうこぼすように言った。足元に水滴がシミを作っている。
晴夫は少し考えて聞いた。
「電車の時間か?」
「…はい」
スーッと体温が引いてくる。
やはりコイツに男を抱けるはずがない。残念なような、なんだかホッとしたような複雑な気分だった。
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